筑波大文系後期日程(第一(人文)学群)/平成10年度模範解答例

【小論文(1)】

次の英文(略)を読んで、次の設問に日本語で答えなさい。(500字程度)

言葉を学ぶ喜びについての筆者の見解をまとめなさい。

ほんの100年前には、読み書きは一般大衆が熱望する対象であった。現在は、その期待を上回るものを我々は求めようとしている。これは、欧米化に伴い物質的な豊かさを追求した結果である。ただ、言葉に対する敬意といったものが失われる中で、現代社会では活字に触れる時間は少なくなっている。言葉に注意が向けられることが少なくなれば、思考の仕方まで悪い方向へ進む。我々は、現代世代が言葉を腐敗させていると思いがちだ。だが、言葉の変化は、他言語を多く借用している我々の言語にはよくあることだ。言語はその言語を用いる一般大衆がその担い手となる。大衆が作り出した言葉が、豊かな語彙を可能とする。しかし、この社会は言語の豊饒さを気にかけなくなっている。とりわけ言葉の専門家は、言葉の正しさを求め許容範囲が狭くなっている。言語を学ぶのにもその傾向が現れ、苦痛をもたらしている。その一方で、子どもは大人に教わることなく、リズムや韻や言葉で遊ぶ。それらを学ぶのには、言語能力というものは関係しない。たとえ言葉としては難しかろうと、それが発話されるのを聞くのは心地よいものだ。これは、言葉以前に、聴覚が先に身についたことと関係するだろう。

(500字)