武蔵野美術大学/平成29年度小論文模範解答例

言葉によるコミュニケーションと、言葉以外のコミュニケーションを、具体例をあげながら比較し、現代におけるコミュニケーションの問題と可能性について、あなたの考えを800字以内で述べなさい。

解答

言葉によるコミュニケーションと言葉以外のコミュニケーションを比較するにあたり、まずコミュニケーションとは何かについて考えを述べる。コミュニケーションとは、人と人との間で成立し、自らの意思を相手に伝える行為である。

言葉によるコミュニケーションには、人と人との間の対話によるものはもちろんのこと、書籍などの文字媒体によるものもある。一方、言葉以外のコミュニケーションには、「アート」と呼ばれる芸術作品群がある。なぜなら、芸術作品とは、その作品を作った人間の思考や意思や思想を伝えるための媒体物だからだ。そして、絵画や映像、音楽、写真などを用いた芸術作品は、言葉以外のコミュニケーションであると言える。この二つを比較すると、前者では、意思を発信する人間の意図が直接言葉に表明されるのに対し、後者では、言葉が介在しないがゆえに、意図が間接的に表明され、意思の受け手の想像力や洞察力が必要とされるだろう。

では、現代におけるコミュニケーションの問題と可能性にはどのようなものがあるか。まず、問題としては、情報化社会の進展により、結果として情報が氾濫していることが挙げられる。この情報は言葉により表現されることが多く、したがって言葉によるコミュニケーションと呼ぶことができる。しかし、言語情報は膨大だが、その言語を理解できる人々にしか届かない。特に少数言語の話者は自らの言語を用いて発信できない。その一方で、言葉以外のコミュニケーションは、その受け手に、言語情報とは違う手法で発信者の意思を伝え得る。私はその点に可能性があると考える。言葉以外のコミュニケーションは、情報を直接的に伝えはしないものの、受け手を選ぶことがない。例えば、絵画であればどんな言語を用いる人にも自分の意思を伝え得る。したがって、どのような人でも共通に理解し得る意思の媒介物としての可能性が、言葉以外のコミュニケーションには存在すると考える。

(800字)