大阪教育大学/平成23年後期日程小論文問題G設問1模範解答

芸術には規則がなくてもよいか。

解答

私は、芸術には規則はある一定の場合において必要であると考える。次にこの点を詳述する。

芸術とは何か。芸術とは、表現者たる人間が、その内にある思いを自分の外側に向けて表現したものの総称であると考える。例えば絵画や彫像がそれにあたる。それらの解釈は芸術作品を目にした他者に委ねられる。次に、規則とは何か。規則とは、一般的に、ある行為や表現をする際に従わなければならない行動様式の総称であると考える。法治国家であれば法律が、村社会においては慣習がそれにあたる。

では、芸術には規則は必要なのだろうか。芸術は二つに分けられると私は考える。一つには、単に表現者の思いが具現化されただけで、鑑賞者という他者を前提としない芸術がある。一方には、自分の秘めたる思いを他者に伝え、わかってほしいという、他者を前提とする芸術がある。そして、後者の、他者を前提にした場合には規則が必要になってくると考える。

なぜなら、他者を前提とする限りにおいて、芸術作品は、他者が理解できるような様式に落とし込まなければならないからだ。例えば、水平線に夕日が沈む風景の美しさを如実に伝えたければ、その風景を忠実に写し取ることが必要になってくることが多々あるということが挙げられる。もちろん、風景の美しさを伝えるにも多くの技法や方法がある。しかし、表現者が、他者を前提として伝えたいものを伝えようとしたときには、他者と自分とで共有可能な、表現上の規則が必要ではないかと考える。それが、先に述べた、「他者が理解できるような様式」である。ここで注意しなければならないのは、他者からの理解を前提としない場合には、規則は必ずしも必要でないということである。すなわち、他者からの理解及び解釈を、表現者が全く必要としない場合には、そもそも共有可能な規則など必要ないということである。

以上のように、芸術には、他者を前提とした場合には規則が必要であると考える。

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