このタレントの写真は、従来日本、そして西洋社会で広く認識されていた、ジェンダーのイメージに関する固定観念を覆す文脈で取り上げられ注目を集めたと考える。これまで日本においては、ファッション誌やメディアにおいて、均整の取れた体つきで端正な顔立ちの女性が、いわゆる「理想的な女性」として雑誌の表紙を飾り、美しいものとして扱われてきた。その中で、今回の写真のタレントは、そのイメージとは離れた外見をしている。それでも、このタレントは日本社会において人気を博し、西洋社会でも驚きをもって受け取られたのだ。
その理由として、これまでの日本や西洋社会では、女性に対して、ジェンダーとしてはいわゆる「女性らしさ」が求められてきた。具体的には優しさや美しさ、可憐さといったものである。ただ、それらはあくまでこれまでの社会が築いてきた虚構のイメージに過ぎないことをこの写真は示したのではないだろうか。そもそも女性に限らず「美しさ」とはその時代や地域によって異なる様相を呈するものである。それなのに、私たちは知らず知らずのうちに当たり前のものとして内面化してしまっていたのだ。個々人に内面化されたイメージは、社会的な合意としてメディアにも登場することで、より一層強化されていく。そして、個人と社会との間で、女性というジェンダーに対する強固なイメージとして固着する。それをこのタレントの写真は崩したのだ。
これはイギリスやアメリカといった西洋社会でも同様である。日本社会は多少なりとも欧米で通用するイメージに影響されるものだから、そのイメージの大本は西洋社会にある。西洋社会で当然とみなされてきた女性に対するイメージへの強烈なアンチテーゼとして写真は機能した。そして自分たちが自明としてきたイメージを再認識させるという文脈で、この写真は西洋社会に驚きをもたらしたのだと考える。(774字)