再生医療とは、機能が失われた臓器の働きを補ったり再生させたりする医療技術のことである。近年になって開発された、ES細胞による再生技術を皮切りとして、iPS細胞も開発され、急速に再生医療技術の応用ができるようになった。この技術を利用すれば、その人自身の幹細胞から、機能が失われた臓器を再生されることができるため、注目を集めている。
しかし、「再生医療」と名がつくすべての技術が、どの面から考慮しても安全だというわけではない。資料は、動物でヒトの耳を再生させたものであるが、周知のように、本人以外のヒトや動物から細胞を移植した場合、拒絶反応が起きる危険性がある。また、再生医療の嚆矢であったES細胞においては、受精卵を破壊して細胞を精製する。そのため、「命のはじまり」とも言える受精卵を破壊してもいいのかという倫理的問題も生じる。さらに、現在注目を浴びているiPS細胞においても、移植した細胞が癌化する危険性がある。また、iPS細胞は、その万能性から本人の精子と卵子を作り出すことが可能である。したがって、それらを用いてヒトの受精卵を生成し、仮に人が誕生した場合、それは本人のクローンなのではないかとの疑念もある。
再生医療は、現在の医療技術では治療不可能な症例を治療するという点において、希望となる技術であることは確かである。しかしながら、技術的・倫理的な面において解決すべき点があることを認識して、医療に臨むべきである。